子どもに菌ちゃん野菜づくりを伝えるときの参考にして下さい。
保育園関係者の研修会で話した内容です。
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野菜作りに興味はありますか?
保育士はじめ、職員のみなさんが興味を持つことで、子どもは興味を持ち、よりおもしろくなる。
食育の原点:自分で食べ物を作ってみる。体験を通して子どもたちが本当に野菜を好きになる。
上手に育つと「食べたくない」という反応も…
野菜たちは自分たちよりも厳しい環境で生きている。
そんな野菜をいただくことを「かわいそう」だと感じる。
子どもと一緒に野菜を育てることで、大人が子どもから教わることは多い。
私は農家として、長崎県の農業改良普及委員を務めていた。その後、自分自身で無農薬でも野菜作りを成功させようと思い退職した。無農薬の野菜作りは当初、虫食いの多い野菜ばかりとなった。
現在では、3ヘクタールで無農薬野菜を育てている。無農薬なので少しは虫も来るが、広がらない。キャベツ、白菜、小松菜、ニンジンなど、どの野菜もほとんど虫食いなく育っている。
青虫は食べるキャベツを選んでいる
死んだものを食べる生き物がいる一方、人間は生きたものを食べる生き物
なぜ人間はこんなに食べる必要があるのか?
子どもたちは1秒間に500万の細胞を新陳代謝しているといわれている。
赤血球は約3か月で交換(死んで)されている。
私たちはどんどん新鮮な命を食べ、古くなった命を捨てる。
では世の中、酸化した、死んだ命だらけにならないのはなぜか?
だれが食べているのか?
→菌や虫たちが食べている。
虫は「死」を探している。青虫は「死にそうなキャベツ」に寄ってくる。
⇒死んでから食べたらタダの虫や菌だが、
死ぬ前の弱っているときから食べたら「害虫」「病原菌」と呼ばれる。
菌は本来、「死」を食べていて、「生」を生かす。
微生物は生きているうちは支えてくれて、死んだら食べている。
虫たちは基本的に腐敗の世界が好きなため、
野菜を健康に育てると虫は寄ってこなくなる。
無農薬栽培は農家より、保育施設の方がうまくいく
農家の畑はすでに微妙に腐敗している。
長年、有機物を入れた結果、土の20cm下に腐敗層(ヘドロ)が溜まっている。
腐敗物も空気があれば酸化分解し、きれいな土になるが、
深いので何年もそのままになっている。
その点、保育施設の土には腐敗層がないのでうまく行きやすい
有機物は腐敗又は発酵して次の生命の材料になる。
多くの生物は腐敗・発酵のどちらかの世界でのみ生きている。
ミミズで言うとフトミミズは腐ったもの、シマミミズは発酵したものを食べている。
畑に入れた有機物が腐っても、腐ったものを食べて生きる生物がいる。
→害虫は腐敗の世界で生きている。
畑から腐敗を無くしたら、野菜がうまく育つようになった。
虫の来ない畑は臭くない。
虫は胃液がないため、食べた野菜が腐っていかないと消化できない。
ビタミンCなど抗酸化力が強い、健康なキャベツであればあるほど、
青虫は消化できず、食べにくい。
ファイトケミカル:腐らない、抗酸化作用が期待できる成分。
無農薬の野菜はこの成分が豊富に含まれている。
15~20cm下に有機物を入れると、空気が足りないので、
腐ったままずっと残ってしまう。
園庭やプランターの土⇒
過去に堆肥など入れていないので土の下の方に腐敗物がなく、うまく育ちやすい。
土に腐敗がないと、後味のよいおいしい野菜ができるので、
ぜひ子どもと一緒にわくわくしながら育ててみてほしい。
食育の第1弾:土作り
<落ち葉や竹などでできる土作り(後ほど実演)>
落ち葉は少し登った山道の側溝にたくさん溜まっている。
スギの葉が一番うまくいく。
スギの葉だけで野菜が育つ。今までの農業技術とは全く違う。
空気中の肥料=窒素
窒素を肥料に変える。変える方法は3つ。
・マメ科植物:マメ科植物の根に共生している「根粒菌」が空中窒素を固定し、肥料に変えている。
・ヤギを飼育する:草を食べたヤギの糞に肥料が含まれている。ヤギのお腹の中に空中窒素を固定できる菌がいる。
・糸状菌を使う:きのこは糸状の菌糸が集まって塊になったもの。糸状菌がエサを食べて伸びると、空中窒素を固定する菌も共生する。糸状菌は糸のように肉眼で見えるため、子どもと一緒に育てるとますますおもしろい!
現在は落葉や枝や竹などを使って糸状菌を増やした野菜作りが広がっている。
落ち葉は腐る心配がないので、生ごみで行うより清潔に、都会のど真ん中でも実践することが出来る。
<生ごみを活用した土作り>
- 調理クズや食べ残しの生ごみを持参してもらい、観察
「捨てている食べ物は実は一番栄養があるところだよ」「皮や芯に一番栄養が多いよ」→皮や芯を探す。
できれば皮まで使って食べてほしいが、給食なので難しい場合、
剥いた皮をコトコト煮ることで雑菌は死に、
ファイトケミカルは壊れずに湯に溶け出す。
皮や芯をじっくり煮て濾したスープは栄養満点。
一部の野菜を皮ごと使用している。
心を落ち着かせるビタミンやミネラル、病気の予防効果のある抗酸化物質の多くは
野菜の皮に多く含まれている。
発達障害っぽい子どもが増えているが、
実は発達障害ではなく栄養欠(現代型栄養失調症)による症状かもしれない。
発達障害と診断される前に、食事内容を見直せば変わる事例も多い。
発達障害は食べ物では変わらないが、栄養欠の場合は変えられる。
医師は行動で判断するため、発達障害か栄養欠かどうかの見極めは難しい。
その子がどのような「うんち」をしているか確認することが大切。
- 「人間が食べなかった皮や芯は菌ちゃんにあげよう」
煮干しや皮や芯の入った給食を食べている子どもたちは風邪にかかりにくく、
かかっても早く治る事例が多い。
今は薬がないと病害虫にやられる野菜が多いが、同じ様に人も弱っている。
理由の一つは殺菌消毒のしすぎ。
子どもは病気をし、治す力をつけ、かからなくなっていくことが本来の人間の姿。
今は何度も同じ病気にかかっている。
人自身が弱っているのに病気のせいにしている。
病気の度、薬に頼っていると、風邪のウイルスでも重症化してしまう。
近年、人食いバクテリア(劇症型溶血性レンサ球菌感染症)という死亡率が高い感染症が増加、
抗生物質が聞かなくなる可能性がある。そうなると、もう逃げられない。
免疫力を上げることしか対策はない。
- 生ごみとして捨てられている生長点
生長点とは? 白菜、キャベツ、レタス、ブロッコリーなどの芯が生長点となる。
生長点からはもう一度芽が出る。やわらかい生長点を菌は食べることができない。
「なぜ菌ちゃんは食べないんだろう?」
→野菜の一番元気な部分だから食べない。菌ちゃんは死んだ部分を食べる。
「じゃ、誰が食べたほうがいい?」→「自分で食べる!」元気になるために、一番元気な部分を食べる。
生長点に栄養がたっぷり含まれている。
実際に野菜を作ると実感できる。
キャベツは春になると芯がキャベツを割って伸び、花が咲く。
「花を咲かせて蝶々を呼び、結婚して、子どもを作りたかったんだ」
「一番大切な芯の部分は死なないように、寒さに負けないように守っていたんだ」
キャベツの一番大切な部分を食べる⇒「キャベツさんの命を私にちょうだい」
野菜のパワーが一番大きい所は「生長点」と知り、捨てられなくなる。
- 菌ちゃんが食べやすいように(腐敗しないように)小さく切る
「人間もお腹の菌ちゃんが食べやすいように、歯でよく噛みつぶすでしょ?だから菌ちゃんが食べやすいように、木づちで小さく噛みつぶそうね」
「歯で潰した食べ物を飲み込む時、唾と一緒に飲み込むでしょ?唾の代わりにボカシ(乳酸菌で発酵した米ぬか)を混ぜて、畑に入れよう」
生ごみは間違った入れ方をすると腐敗し、虫が寄って来るので、できるだけ小さく切って潰す。
- 3日目に土を触ってみると…
発酵熱で暖かくなっている。菌ちゃんが土の中でどんどんエサを食べて、どんどん増えている。
「菌ちゃんがおしくらまんじゅうをしているから暖かいんだね」
「空気が足りないと苦しくなるから、土を混ぜて空気を入れてあげようね」
土が暖かくなっているので、菌がいることを実感できる。
- きれいな土ができあがり、虫の来ない野菜ができる
エサとして潰して入れた野菜が無くなっている!
元気な野菜を作ってみると、病原菌を殺しても意味がないことが分かる。
病原菌を殺しても、野菜を元気にはできない。
薬を飲ませても、子どもを元気にはできない。
薬は対症療法。このままでは症状が悪化してしまう場合、病原菌をやっつけるために薬を使う。
→長期的にみれば免疫を獲得できず、再感染につながる。
子どものうちに免疫のバリエーションを増やしておく。
免疫機能を消防団に例えると…
地域の消防団は日頃から消火活動の練習ができる。
私たちの体内の消防団(免疫機能)は練習ができない。
40℃まで体温を上げる練習、マクロファージやキラーT細胞を意図的に集めて活動させる練習はできない。
私たちの消防システムは病気をしないと強くなれない。
病気にかかることで練習できる。自分で治せるのであれば、自分で治したほうが良い。
病気にかかってもすぐ治せる子のうんちは浮いていたり、においがしなかったりする「発酵型」。
人間の腸内細菌は土壌由来
土を触った子どもたちはどんどん強くなる。土の中には良い菌がたくさんいて、またチョイ悪菌も少しいる。
チョイ悪菌がいることで私たちは強くなることができる。
食育の第2弾:野菜作り
- 菌ちゃんが野菜を元気にしてくれる
畑やプランターに野菜を植える時も水やりする時も子どもたちは真剣。
「菌ちゃん!おいしい野菜作ってね!」
「水はあげちゃいけない。あげたらこの野菜はいつまでも水をあげないといけなくなるよ。君たちは園がお休みの時も水やりに来られる?自分の力で生きられるようにした方がいいよ。」
ミスをやらないと、野菜は水を求め、根を下へ下へと伸ばしていく。
保育施設で育ったキュウリはなぜ弱いか? →すぐに水やりをするから。
プランター栽培の場合は水やりが必要だが、露地栽培なら、小さいキュウリが出来る前まで(育成期)は水をできるだけ控えることで、試練を乗り越えようと根は下に伸びてどんどん強くなる。
だからといって、まったく水をやらなかったら試練(ストレス)が強すぎて死んでしまう。
キュウリができてきたら(繁殖期になったら)あまりストレスはかけない。たっぷり水をあげて育てる。
人もどこまで見守るか、どこで保護するか
…野菜と同じで、保護が早すぎると、とても弱い大人になる。
育成期に試練を乗り越えた野菜は強い
…人も同じで、繁殖期になる前までに試練が必要・・生命育成の原理と言える。
育成期、繁殖期、老化期に分けられるのは人も野菜も同じ
無理をしても乗り越えられるのが育成期。
暑い時期にしっかり汗をかくと、汗腺から汗を出す能力が発達するし、汗腺の数も増える。
ハードルがないと能力が発達しない。寒さ、暑さは能力を発達させるためのひとつのハードル。
ハードルを飛び越えずに横を走っていれば(温度管理された部屋でずっと過ごす)能力は育たない。⇒とても暑くなった日でも、無理をせず徐々に慣らしていくような活動を取り入れる。
野菜も人も繁殖期以降に無理はできないし、してはいけない。
ハウス栽培された野菜は紫外線が当たらずホカホカした環境でグングン育つが、
ハウスが破れると死んでしまう。
子どもたちが卒園したあと、生きていく時に、もし電気が止まったら・・
もしもっと恐ろしい感染症が流行ったら・・
その時に元気に生きていくためには、育成期(幼児~小学校低学年)に守りすぎないことが重要。
- 水遊びをした子どもたち「ピーマンさんにお水あげてもいい?」
「プールに入りながらピーマンのことも考えているなんて優しいね。でもね、ピーマンに少しの水をあげたらお湯になってしまうよ。冷たい水になるようにずっと水やりができる?できないから今はあげない方がいいよ。夕方にあげようね。夏の野菜は人間よりずっと強くて、ずっとお日さまが当たっても平気なの。」
「ピーマンってすごいな!」と感じることができる。
- ほうれん草は1つの株自体が、オスかメスかに分かれている
反対にキュウリは一つの株に雄花と雌花があり、結婚してキュウリができる。
「ほうれん草は生まれた時から男の子と女の子に分かれるんだよ。
どれが男の子か、女の子か分かる?」
大人になれば分かるようになる。(雄株:茎の先端に花がつく。雌株:茎の付け根に花がつく。)
- 大根を食べるときに「かわいそう」という子どもたち。
そこで、いくつかの大根を食べずに畑に埋めておくと
大根が花を咲かせ、1万のタネ(子ども)を作る。「君のお母さんは何人子どもを産んだ?」
「なんで大根はこんなに沢山子どもを産んだと思う?君のお母さんが1万人子どもを産んだらどう?」
→「名前が分からなくなる!」「家に入れない!」
ではなぜ大根さんはこんなにたくさん子どもを産むのか?
「残った大根さんが他の大根さんの子どもを作らないといけないから」
子どもたちは植えて育てて食べる体験をしてきているので分かる。
つまり、大根は最初から人間に食べられることはわかっていたんだ。
「君たちが大根かわいそうと思って誰も食べずに、すべての大根が子どもを生んだら、世の中は大根だらけになってしまって、大根の食べ物もなくなる。だから、君達がこの大根食べたい!と思えば、大根は喜んで、君の中に入って君の栄養になるんだと思うよ。」
「でも君が食べなかったら、大根さんは本当はこれから花を咲かせたかったし、子どもを産みたかったんだよね。その力をもらって、君たちは生きていくんだよ。」
- 自分たちで育てた人参の味が分かる
ある保育施設で育てていた「菌ちゃん人参」。
給食で使っていたが、無くなったので市販の人参を小さく切って味噌汁に使った。
→年長の子どもが「今日は菌ちゃん人参じゃないの?」と聞いてきた。なぜわかったのか?
・年長~小学校低学年くらいは味蕾細胞が特に発達する時期だから。
・「自分たちで作った人参だ」と意識して、味わおうとしながら食べたから。
食べ物を本気で大切にする心が育っていく。
食べるということは地球上で一緒に生きていた生き物を途中で殺して、私たちの生きる力に変えていく。
「いただきます」という言葉の意味が分かっていく。
地球上の生き物はすべて役割があって、みんなで生きている。こんな感覚が生まれる。
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